症例紹介

Case introduction
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子宮蓄膿②


今回ご紹介するのは、子宮に膿が貯まってしまった柴犬さんのお話です。

子宮に膿が貯まってしまう病気、子宮蓄膿症といいます。これまでカメやセキセイインコ、ハムスターやハリネズミさんなどでも同じ手術、卵巣と子宮の摘出手術してきましたが、ここまでギリギリの状態で手術をしたのは初めてといっていいぐらい、リスキーな手術となりました。

まずは来院当初の、すべてを諦めてしまったような悲しい目をした柴犬さんの様子をご覧下さい。すべての検査および処置にも無抵抗、なすがままでした。

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エコー検査、細胞診、血液検査の結果などから子宮蓄膿症と診断されました。 さらに良くない事に、急性腎不全を合併して重度の脱水と高カリウム血症がみられました。

とても危険な状態ではありましたが、ある程度輸液をして少しでも状態が改善した後、手術をするしか助かる可能性が考えられませんでした。

麻酔の導入時、心拍数と血圧がみるみる低下していきました。 「これは非常にまずい・・・」 もう手術どころではありませんでした。 すぐに麻酔を中止して、アトロピン(心拍数をあげる注射)とドパミン(血圧をあげる注射)をしてまずはバイタルの安定化を第一にできることをしました。

しかしながら、無情にも心拍数は40と危機的状況・・・血圧も測定不可能なくらい下がってしまっています。

その後輸液をどんどん追加して、徐々にバイタルが改善してきました! とにかく、このこの生命力にかけてやるしかない・・・そう覚悟を決めてお腹を開けたとたん・・

また心拍数と血圧が一気に低下して、最初の危機的状況に戻ってしまいました。 お腹の中には、破裂寸前にまでパンパンに腫れた子宮がありました。開腹したせいで、腹圧が一気に下がって血圧が下がってしまったのかもしれません。またしても麻酔を切って、バイタルの改善に全力を注ぎながら平行して手術を進めていきます。麻酔をしていなくても、覚める気配はありません。不整脈も出始めました。

「手術中だけどもう、危篤状態にあることを飼い主さんに電話しなきゃ・・」

飼い主さんとこの子の入院と手術の手続きをした後の別れ際、 「また後でね、元気になって帰っておいで・・・」 そうこの子に言い残して帰られました。

その想いに応えられずに、この残念なお知らせをしなければならない・・・自分の中でも気持ちの整理が出来ないでいた時、

「先生、自発呼吸が再開しました!心拍も戻ってきました!」 肝臓の腫瘍切除でも頑張ってくれた優秀なスタッフがいち早くその変化に気がつき、適切な対処をしてくれたのです。

その後は、とても順調に事が進み、無事手術が終わり、麻酔からも正常に覚醒してくれました。すぐに飼い主さんに一報をいれます。 「手術は無事終わりました。危ない所でしたが、本当によく頑張ってくれました。術後の経過次第ですが、一番の山場は越えたと思います」

それからはみるみる元気になって、次の日には約1週間ぶりの食餌をしてくれました。

急性腎不全もほぼ正常にまで改善、約1週間の入院で無事退院の日を迎えることができました!

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今回はとても運がよかった・・・僕はそう思います。子宮蓄膿症は発見が遅れると死んでしまう、非常に怖い病気の一つです。できれば若いうちに避妊手術をして病気の予防に心がけていただけると幸いです。

柴犬の写真 子宮蓄膿症の手術写真

子宮蓄膿症の手術の様子。今出ている臓器が子宮です。私の手首ほどの太さにまで腫れてしまっていますが、正常な子宮なら小指ほどの太さぐらいでしょうか。この子宮の中身が全部、膿なのです!

子宮から膿を摘出した写真

無事、摘出完了しました。重さにして約700g。この子の体重の約10%にもおよびました。

柴犬の術後写真
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